学んで「知っている」のに、実務では「使えない」...学び直し=リスキリングをする社会人が増える一方で、こうした悩みを持つ人も同時に増えています。そしてこれは、人材育成をしたい企業にとっても大きな課題となっています。せっかく時間とお金というコストをかけて学んでも、実務に活かせない=成果に繋がらなくては意味がありません。本記事では、こうした課題を解決するためにまず知るべき「知識」と「スキル」の違いを、学習にまつわる理論(インストラクショナルデザインや学習科学)と6つのスキルをリスキリングし、現在は法人研修の講師として活躍するリスキルドクターMogの実践知を交えてお伝えします。目次知識とスキルの違い知識とスキルの違いは一言で言えば「知っている」と「使える」の違いです。「知識として知っていれば使える」と考えてしまいがちですがこの2つの状態には大きな隔たりがあります。例えば、柔道の背負い投げを考えて見ましょう。多くの人が背負い投げとはどんな技で、どのようにかけるのかを知っていると思います。しかし実際に背負い投げを自分が誰かにかけられるかと言えば、柔道経験者でない限り多くの人にとって難しいでしょう。つまり知っているだけでは使うことができないのです。そしてそれは柔道のような実際に体を動かすようなスキルに限らず、ビジネススキルにも当てはまります。理論から見る「知識」と「スキル」の違い効果的な学びを科学する「インストラクショナルデザイン」の第一人者であるアメリカの心理学者ロバート・M・ガニェは「学習成果の5分類」という理論を提唱しています。詳細は省きますがこの理論の中でガニェは知識とスキルを以下の形で明確に分けています。言語情報(知識):指定されたものを覚える宣言的知識知的技能(スキル):規則を未知の事例に適用する力知的技能である「規則を未知の事例に適用する力」は、まさにビジネスでにおける課題解決に他なりません。そしてこの区分から「言語情報」としての知識だけでは、その能力は発揮されないことが分かります。学習成果の5分類に関してはこちらの記事で詳しく解説しているので、気になる方は読んでみてください。%3Cdiv%20class%3D%22iframely-embed%22%3E%3Cdiv%20class%3D%22iframely-responsive%22%20style%3D%22padding-bottom%3A%2071.2791%25%3B%20padding-top%3A%20120px%3B%22%3E%3Ca%20href%3D%22https%3A%2F%2Femprony.com%2Fskillpocket%2Ffive_categories_learning_outcomes%22%20data-iframely-url%3D%22%2F%2Fiframely.net%2F6asjSQv%22%3E%3C%2Fa%3E%3C%2Fdiv%3E%3C%2Fdiv%3E%3Cscript%20async%20src%3D%22%2F%2Fiframely.net%2Fembed.js%22%3E%3C%2Fscript%3Eスキルとはなにかではどうしたらこのスキルは身につくのでしょうか。それを考えるために、まずそもそもスキルとは何かについて詳しく考えてみたいと思います。まずスキルと言っても使われる文脈で様々な意味を持ちます。そのためまず、この記事で取り扱うスキルはビジネススキルに限定したいと思います。その前提でスキルとは何か、一言で言えばそれは「問題解決能力」だと私は考えています。例えば、ユーザーにとって魅力的に見えるパッケージが欲しいという問題であれば「デザイン」、本質的な課題はなにかが分からないという問題であれば「ロジカルシンキング」といった具合に、ビジネス上の何かしらの課題を解決するためにスキルは用いられます。そしてこの「ビジネス上の課題を解決するためのスキル」は主に2つの力によって構成されると私は考えています。一つは「予測力」、そしてもう一つは「実践力」です。予測力とは「問題解決に必要なアクションを状況に応じて予測できる力」であり、実践力はそのアクションを「利益を最大化するスピードとクオリティで実践できる力」です。この2つの力が揃って初めて実務で使えるスキルとなります。現状スキルアップに取り組まれている方の多くは、社内研修、社外スクール、eラーニングや本読むなどが主な活動かと思います。これはスキルアップの重要な活動ではあるのですが、ただ知識としてインプットするだけに留めてしまっているケースが非常に多いです。知識として知っているだけでは、状況に応じて必要な具体的なアクションを予測することも、スピーディかつハイクオリティで実践することも難しく、学んでも使えないという結果につながってしまうのです。これが学んでも使えないという課題の正体だと私は考えています。必要知識の予測ビジネスにおける問題は様々な要素を含んでおり、かつその要素は状況に応じて変化します。例えばそれがデータを用いれば解決できそうな課題であっても、具体的にどういう知識が必要なのかは状況に応じて大きく変化します。予測力とはまさにこの変化に応じて、必要なアクションを予測することができる力のことを指します。問題の背景や成り立ちを理解した上で、最適なアクションを予測するためには知識の深い理解と実践での経験が欠かせません。実践ビジネスにおける課題解決で最終的に重要なことは、当然ですがどれだけ利益に貢献したかになります。そういった意味ビジネスにおけるスキルとして求められるのはただ実践できるだけではなく、短期間で大きな成果を出す=ROIが高いスキルになります。実践はできるけれど時間がかかってしまう、もしくは時間はかからないけれどクオリティが低いという状態では課題解決のコストが利益を上回ってしまい意味がありません。そして会社としてはそうした状態のスキルをスキルとして認めることはありません。ただできるのではなく利益を最大にできるスキル=ROIの高いスキルを磨くことが重要であり、そのためには一定の訓練と経験が必要になります。まとめ今回はシリーズ「リスキルドクターが教える"使えるスキルが100%身につく"学び方」の第1回として、知識とスキルの違いについて理論と実践知を交えながら解説しました。「知識として知っている」状態と「実務で使える」状態に大きな違いがあります。この違いを理解しそして「実務で使える」状態にするための適切な訓練を積むことが、スキルアップには欠かせません。このシリーズでは実務で使えるスキルはどうすればリスキルすることができるのか、について様々な理論や実践知を交えながら紹介していく予定です。ぜひお楽しみに!