変化の早い時代において取り残されないためには、新しいスキルを習得していくことが必要です。そのためにリスキリングやアンラーニングが重要である、という考え方は社会の共通認識になりつつあります。しかし、リスキリングとアンラーニング、それぞれがどう違うのかよくわからないという方も多いのではないでしょうか。本記事ではリスキリングとアンラーニングの違い、そしてリスキリングを効果的に行うためのアンラーニングのポイントを実体験を交えてご紹介します。アンラーニングとリスキリングの違いアンラーニングとは何かアンラーニングとは、既存の知識や習慣から離れ、新しい知識やスキルを受け入れる準備をすることを指します。これはつまり「自分は何も知らない」という姿勢で、新しい知識やスキルを学ぶということになります。テクノロジーの急速な進化や業界の変化が激しい現代では、従来の考え方に捉われずに柔軟に対応するために、このアンラーニングが不可欠だと言われています。アンラーニングによって古い知識にとらわれず、オープンな姿勢で新しいことを学ぶことで、これまでになかった新しい発想や価値が生まれやすくなります。アンラーニングは新しい知識や変化にポジティブなマインドセットを構築する土台でもあると言えます。リスキリングとの関係性一方でリスキリングは、新しい知識やスキルを身に付けることを指し、アンラーニングとは異なる概念です。アンラーニングは新しい知識を受け入れる準備であり、リスキリングする際の前提条件と考えたほうが良いでしょう。アンラーニングをせずに新しいスキルを学んでも、固定観念にとらわれがちで新しい知識の定着を妨げる可能性があります。しかし、アンラーニングを実践することで、柔軟な思考ができるようになり、リスキリングがスムーズに進められるようになります。このように、アンラーニングとリスキリングは密接に関係しており、時代の変化に適応するスキルを身につけるためには、この2つを併せて実践することが非常に大切です。リスキリングを加速させるアンラーニングアンラーニングがリスキリングへ与える影響これまで書いてきたようにリスキリングを効果的に行うためには、アンラーニングが欠かせません。アンラーニングなくしてはリスキリングは難しく、アンラーニングがリスキリングを大きく加速させる役割を果たします。具体的にアンラーニングがリスキリングに影響を与える要素としては、以下の3点が挙げられます。■柔軟性の向上 アンラーニングにより既存も知識から離れた柔軟な思考ができるようになるため、新しい知識を受け入れやすくなります。結果として変化を恐れずに前向きにリスキリングに取り組めます。■学習意欲の向上 固定概念から解放されることで、新しいことへの好奇心が掻き立てられます。知的好奇心の高まりが強い学習意欲につながり、リスキリングを促進します。■スキル習得スピードの向上旧来の考え方にとらわれないため、新しい知識をスムーズに理解できます。これまでの知識に邪魔されずに素直に新しい知識を受け入れることができるためです。結果としてスムーズに新しいスキルを吸収でき、リスキリングが円滑に進みます。このようなメカニズムを通じて、アンラーニングはリスキリングを力強く後押します。取り組む流れとしてはまずはアンラーニングを実践し、その上でリスキリングに取り組むことでスキルの習得を加速させることができます。アンラーニングを効果的に活用するためのポイントアンラーニングは慣れてくると自然と行うことができるようになりますが、始めのうちは難しいと感じる方も多いかもしれません。そんな方へ効果的なアンラーニングを実施するためのポイントをいくつかご紹介します。■ネガティブ思考から意識的に離れるそもそも変化を恐れたり、新しいことに対して否定的になってしまうとアンラーニングすら行うことができなくなってしまいます。外部環境の変化は自分の意思とは関係なく起こるので常に変化に対して前向きな姿勢を持ち続けることが重要です。■客観的に自分を見つめ直す 自分の長所と短所を冷静に見つめ直すことで、アンラーニングすべき点が見えてきます。常に自己を客観視する習慣を持ちましょう。■他者からのフィードバックの活用職場の上司や同僚から建設的なフィードバックを受けることで、これまで気が付かなかった自分に気がつくことができ、それがアンラーニング、リスキリングにつながっていきます。他者の意見を取り入れる姿勢を大切にしましょう。■習慣化いきなり始めるのではなく日々の小さな習慣の中にアンラーニングを取り入れるように意識すると上手くいきやすくなります。例えば家事をしているときや通勤中など隙間時間に自分の考えを見直す習慣をつけるのがオススメです。以上のポイントを意識すると、より効果的なアンラーニングを実施しやすくなります。ぜひ実践してみてください。アンラーニングがリスキリングを加速させた実体験最後に私自身の経験をここでご紹介します。これまでたくさんのスキルをリスキリングしてきましたが、私自身初めからアンラーニングを意識できていたわけではありません。とあるきっかけから、半ば強制的にアンラーニングを経験し、それからアンラーニングの重要性に気が付きます。それはある国内MBAの授業を初めて取ったときのことです。いわゆるロジカルシンキングを教えるクラスでした。まだ20代で若かった私は「ロジカルシンキングなんて自分はもうできている、学ぶ必要なんてあるんだろうか」などというとても生意気なことを考えていました。まさにアンラーニングができていない状況だったのです。そうした心境ですからクラスの初めは「ふんふん、そんなこと知っているよ」というような態度で授業を受けていました。しかし、徐々に「あれ、これ自分、全然できてない。というかこんな考え方知らない。」ということに気がつくようになります。当初抱いていた生意気な考えはだんだんとしぼんでいき、自分が劣等生になったかのような気持ちに陥りました。今思い返してもとても惨めな気持ちになるのですが、実際当時は自分の出来なさに愕然としたことをよく覚えています。ただその時の私が一つ良かったのはある割り切りが出来たことです。それは「自分は何も知らない」という前提でこのクラスを受けよう、というものでした。こう割り切ってしまうことで、授業の内容がこれまでとは比べ物にならないほど頭に入るようになりました。そして何よりも学ぶ姿勢がガラッと変わりました。「何も知らない」のだから真剣に学ばないとついていくことができない、と。周囲に優秀な人が多かったこともあり、当時は本当に必死でした。結果としてここで学んだことは本当に深く自分の中に染み付き、その後の仕事の質を大幅にアップさせることができたと思っています。この経験から私はその後何を学ぶ時にも「何も知らない」自分でいるように心がけています。そしてそれはまさにアンラーニングなのです。終わりに今回はリスキリングとアンラーニングの関係性とリスキリングを加速させるためのアンラーニングのポイントについて解説しました。変化の激しい時代において、新しいスキルの習得をし続けることはとても大切です。ただし、一つのスキルを時間をかけて習得するアプローチでは変化に対応できない可能性が高く、効率的に習得することが求められます。そのためにはリスキリングをアンラーニングとセットで行うことがとても有効なので、ぜひ実践してみてください。本記事を参考により良いリスキリングに取り組んでいただけるようになれば幸いです。