ラーニングピラミッドという学習理論を知っていますか?この理論は学習方法によって知識・スキルの定着率の違いを明らかにした理論です。例えば、講義のような聞くだけの学習方法では、知識・スキルの定着率がわずか5%程度であることが明らかにされています。一方で、実践したり他者に教えたりするアウトプットベースの学習では90%以上の定着率であることも分かっています。本記事では、ラーニングピラミッドを活用した、学んだスキルを確実に身につけるための効果的な学習方法について、マルチメディアの活用やアウトプット重視の観点から詳しく紹介します。組織としての人材育成の取り組みにも触れますので、ぜひ参考にしてください。ラーニングピラミッドとは?知識の定着率を可視化した理論ラーニングピラミッドとは、様々な学習方法における知識の定着率を階層化した理論です。この理論によって、ただ聞くだけといった受動的な学習よりも、自分の手を動かすなどの能動的な学習ほど定着率が高まることを明らかになりました。講義形式の学習では定着率は5%程度「講義を聞く」という学習方法はピラミッドの最上部に位置づけられていて、その定着率はわずか5%程度と言されています。これは人間の記憶と関連していて、講義のような受動的なインプットは、非常に短い間しか記憶として保持できない短期記憶に保管されてしまうことと関係しています。短期記憶は時間の経過とともにその多くが失われてしまう性質を持っており、たった20分でそのうちの半分以上をわす忘れてしまうと言われています。(エビングハウスの忘却曲線理論)つまり話を聞くだけでは、せいぜい短期的な記憶にしかならず定着はしないのです。その日に受けた学校の授業の内容や会社で受けた研修の内容を、次の日には忘れてしまっている経験に覚えがある人も多いのではないでしょうか。能動的な学習が重要な理由一方で、「実践する」「教える」といった能動的な学習行為の定着率は90%を超えるとされています。自分で考え、実際に行動することで、ただ聞くだけよりも脳に負荷がかかり、知識が定着しやすくなるためです。これを専門用語でアクティブリコールと言います。定着という観点では「学んだことを実際に使う」というのが望ましい学習方法ではあるのですが、研修内におけるグループ討論のように自分の口で学んだことを発信することでも知識の定着を図ることが十分に可能です。ポイントは自分の頭を使って学んだ内容を捉え直しアウトプットすることです。あまり形式にとらわれずにただインプットして終わりではなく、できる限り「自分で考える時間」を設けるようにすることが定着においては非常に大切になります。ラーニングピラミッドから考える定着率を高める効果的な学習法マルチメディア学習: 複数チャネルからのインプットを意識する人間は複数の感覚器官、例えば視覚と聴覚、から情報を得る方が記憶が定着することが知られています。一つの感覚器官が一度に処理できる情報が限られているため、複数の感覚器官で処理した方が処理できる情報が増えるためです。文字情報、画像情報、音声情報など、様々な形式の情報を組み合わせてインプットするマルチメディア学習では、これらの情報が互いに補完し合うことで、より深い理解が促進されます。例えば、難しい概念は絵や図解で視覚化すれば分かりやすくなるなど、多様なメディアを組み合わせることで学習効果が高まります。小さなアウトプット: 学んだことをグループで議論したり、簡単な実践をする最近の研修では研修中に小グループでディスカッションする時間を設けたり、簡単な実習を交えることが当たり前になってきています。学びを深める意味ではこの小さなアウトプットの時間を積極的に活用することが重要です。学んだことを自分の言葉でアウトプットすることで、能動的な学習になり定着率が飛躍的に伸びます。研修などでのグループワークは中々発言しづらいこともあるかもしれませんが、スキルの定着ために積極的に活用することをオススメします。また、研修を企画・実施する場合は必ずこの小さなアウトプットの時間を取り入れるように工夫してましょう。研修の最後に今日学んだことや感想を2~3人で話合ってもらう時間を取るだけでも、学習効果に差が出ます。大きなアウトプット: 発表などを通して学んだことを他者に教える機会を設定するラーニングピラミッドが定義する学習の中でもっとも定着率が高いのは「教える」行為です。研修の最後に受講者一人ひとりが発表を行ったり、後日別の場所で自分が習得した知識を実演して他者に伝える機会を設けることで、より確実に知識が身につきます。私は現在データ分析の講師をしていますが、講師を始めてからより深くデータ分析を理解できるようになった実感があります。私自身データサイエンスを社会人になってから学び直し、そのスキルを活用して仕事をしていました。ただ、働きながら学んだこともあってより深く学ぶという時間が取れず表面的なスキルで仕事をしてしまっていたこともありました。しかし、自分が教える側に回ると、表面的な知識では到底間に合いません。結果として自分の知識やスキルを噛み砕いて理解し直す、理解が浅い部分は学び直す、ことに繋がり、これまでよりも深くデータサイエンスを理解できるようになりました。このように、講義とマルチメディアによるインプット、小さなアウトプット活動、そして教える体験を組み合わせることで、ラーニングピラミッドに基づいた効果的な学習が可能となります。また、上記と合わせて「反復学習」を用いると学習効果がより大きくなります。「反復学習」について知りたい方はぜひこちらの記事も合わせて読んでみてください。%3Cdiv%20class%3D%22iframely-embed%22%3E%3Cdiv%20class%3D%22iframely-responsive%22%20style%3D%22padding-bottom%3A%2071.3953%25%3B%20padding-top%3A%20120px%3B%22%3E%3Ca%20href%3D%22https%3A%2F%2Femprony.com%2Fskillpocket%2Fimportance_repeated_learning%22%20data-iframely-url%3D%22%2F%2Fiframely.net%2FBmmOJTI%22%3E%3C%2Fa%3E%3C%2Fdiv%3E%3C%2Fdiv%3E%3Cscript%20async%20src%3D%22%2F%2Fiframely.net%2Fembed.js%22%3E%3C%2Fscript%3E組織的なスキル定着を促進するための取り組み個人の学習にとどまらず組織として効果的にスキル定着を図るためには、様々な施策と体制づくりが重要になります。研修の機会だけでなく、日々の業務の中にも工夫が必要不可欠です。人事部門と現場の協力体制研修を企画・実施する人事部門と、現場でスキルを実践する従業員が密に連携することが肝心です。人事は、現場のニーズを把握し、実践的な研修を用意します。一方現場は受講後の定着に向けて、適切なフォローアップを行う必要があります。このように相互に協力し合うことで、研修とOJTを効果的に組み合わせられます。LMSやeラーニングツールの積極活用学習管理システム(LMS)やeラーニングコンテンツを活用することで、個人に合わせた学習機会を柔軟に提供できます。オンライン教材はいつでも受講できますし、進捗管理も容易なため、個々人のスキルレベルに応じた学習フォローが可能です。OJTやコーチングを通した現場での実践と振り返りスキルの定着には現場での実践が何より重要です。OJT(On-the-Job Training)を通じて、上司や先輩から実務を学びながら知識の定着を図りましょう。さらに、コーチングによるフィードバックと振り返りを行うことで、スキルの更なるブラッシュアップにつなげることができます。このように、組織的な施策と、部門を越えた連携によって、研修で得た知識を確実に実践の場で活かせるようになります。一過性のスキル習得に終わらせることなく、継続的な振り返りとスキルアップのサイクルを生み出すことが肝心です。終わりに今回はラーニングピラミッドと効率的な学習方法について解説しました。社会人になってからの学び直しは時間との勝負です。限りある貴重な時間を使うことになるので、効率を高め最大のリターンを得られるように意識することが重要です。今回ご紹介したラーニングピラミッド以外にも、学習効果を高める研究や理論をたくさんあるので、ぜひいろいろとチャレンジしてみてください。